非粘着コーティング事業部

オリジナル設計のコーターで基材表面に非粘着コーティング(トフマク)

高い精度/高摩擦耐久性/長寿命の非粘着性

ヤマナカヒューテックの非粘着コーティングは、オリジナル設計の専用コーターで施工するコーティング技術です。お客さまからお預かりした基材表面に非粘着性を付与することが可能です。

コーティング膜は無色透明で“非常に薄く”基材の寸法精度を損ないません。また独自の膜構造による高い摩擦耐久性があり、長期にわたり非粘着性が維持されますので、幅広い用途でご利用いただいております。

工業用刃物から金型、半導体製造装置部品など幅広い使用用途

01 膜構造/膜構成

まず最初に簡単にコーティング構造をご紹介いたします。

1層目
無機シリカ(SiO2)下地層:あらゆる基材表面をナノスケールのシリカ被膜で覆います。
2層目
無機シリカ(SiO2)凹凸層:様々な粒径と高さのある微小なシリカ粒子を一定の密度範囲で覆います。凸層の高さは最大で2μm程度です。トフマク技術の要所(キモ)となります。この凹凸層により、他の非粘着コーティングで必要となる「ショットブラスト」等による基材表面の凹凸化が不要となります。
3層目
非粘着層:ナノスケールのシリコーン系、あるいはフッ素系の非粘着膜が2層目の微小凹凸に追従し隙間なく覆います。

以上の3層構造の加工は、すべて室温でのコーティング加工と150℃以下の乾燥・焼成となっており、低温プロセスとなっています。

非粘着コーティングの膜構造・膜構成について詳しくご紹介していきます。

構造イメージ:3層構造で「非粘着」を実現
  • ・基材をクリーニングした後、1層目のシリカ連続膜を成膜・焼成します。
  • ・次に凹凸構造となる2層目のシリカ粒子層を成膜・焼成します。
  • ・最後に3層目の非粘着層を成膜・焼成します。
シリカ粒子層の拡大写真
  • ・凹凸構造となる2層目のシリカ粒子層の拡大写真です。
  • ・大小(数μm~数10μm)の直径の粒子層が偏りなく分布する凹凸構造を形成します。
  • ・この拡大写真は、平坦な試験基材に成膜し、凹凸構造を確認できる条件での撮影です。(通常の成膜では、無色透明なため、このような凹凸構造は観察できません。)
測定装置「小坂研究所ET3000i」
  • ・表面プロファイル測定装置によるサンプル基板の測定
  • ・測定装置は、触針式段差・表面粗さ計「小坂研究所ET3000i」です。
  • ・測定精度(再現性): 1nm(1/1000μm)(1σ)
表面プロファイル測定装置によるサンプル基板の測定データ
  • ・表面プロファイル測定装置によるサンプル基板の測定データです。
  • ・1層目と2層目によるシリカの凹凸構造では、約0.2μmの高さの凹凸に加えて最大で1.4μmに達する突起が形成されています。

02 施工環境

非粘着コーティングは当社Y’sテクノセンター クリーンルーム内の専用ラインで施工しています。(クラス1000)

温湿度やパーティクルを管理した環境で施工される当社のコーティングは半導体製造装置などの精密部材にも採用されております。競合技術と一線を画した高い品質と再現性を実現しています。

Y’sテクノセンター クリーンルーム内の写真
Y’sテクノセンター クリーンルーム内の写真

03 非粘着耐久性のメカニズム

2層目の凸形状が摩擦する部材との接触面積を低減し、3層目非粘着層で覆われた表面の動摩擦係数を抑制します。2層目の凹形状に追従し隙間なく被膜化した3層目非粘着層は半永久的に留まります。

当社非粘着コーティング

当社非粘着コーティングの構造断面図。基材上に1層目シリカ連続膜、2層目シリカ粒子、3層目非粘着層が積層され、粒子の凹凸により摩擦部材と点接触している状態。
  • ・摩擦部材との接触は、点接触となる
  • ・摩擦部材との接触面積が小さいので3層目「非粘着層」との摩擦を大幅に低減する
  • ・2層目の凹形状に隙間なく被膜化した3層目 非粘着層は、摩耗せずに半永久的に留まる

他社非粘着コーティング

他社非粘着コーティングの構造断面図。基材上に平坦な非粘着層が形成されており、摩擦部材と広い面積で面接触している状態。
  • ・摩擦部材との接触は、面接触となる
  • ・摩擦部材との接触面積が大きいので非粘着層との摩擦が大きくなる
  • ・非粘着層は、摩擦により摩耗する
  • ・非粘着層がなくなると動摩擦係数が急激に増加する

04 非粘着の身近な事例

1)「非粘着」加工の市販ハサミとの比較実験

粘着テープ切断時にハサミにテープの粘着剤(糊)が付着して切れ味が急速に悪くなることはよくあります。そのため、文具メーカーをはじめ、多種多様な「非粘着」ハサミが販売されています。その中で特殊コーティングによる「強力非粘着ハサミ」との比較を行いました。

2)強力粘着テープの10,000回連続切断試験での比較

「強力非粘着ハサミ」のメーカーが「非粘着」性能の説明動画で使っている強力粘着テープを用いて10,000回連続切断を行いました。(強力粘着テープ:光洋化学 エースクロス011黒)

当社「非粘着」加工 市販ハサミ(レイメイ藤井(ステンレス ロングタイプ 刃渡り 115mm)SH105へ当社の非粘着コーティングを実施。)と他社「強力非粘着ハサミ」。
10,000回切断後 ハサミ刃端部の拡大画像。当社コーティングを施したハサミは粘着物の付着がほとんどありませんでした。
10,000回切断後のハサミ開き荷重測定。当社「非粘着コート」:約0.6N。他社製「強力非粘着ハサミ」:約5.1N。当社コーティングを施したハサミは軽い切れ味が持続しました。

05 非粘着耐久性の定量化

当社では、非粘着性の耐久性を定量的に評価するため、往復摩擦試験を行って動摩擦係数と接触角の測定を行っています。

1)摩擦係数の測定

➀摩擦係数とは?

物体同士が接触し、相対的にすべるときに摩擦力が発生します。

摩擦試験は、この摩擦力を測定し、材料のすべりやすさ・摩耗特性を評価する試験です。摩擦係数は、下記の式で表されます。

摩擦係数(μ)μ=荷重/摩擦力

当社では、非粘着性(すべりやすさ)の耐久性試験に荷重(おもり)、摩擦の条件(摩擦治具の材料、形状、寸法、往復スピード、繰り返し回数)を設定して測定を行っています。

非粘着性の摩擦係数は、物体が動いているときの摩擦係数である「動摩擦係数」を測定しています。

➁動摩擦係数測定装置

当社では、下記のような特長がある新東科学 TYPE:14FWで動摩擦係数を測定しています。

  • a)摩擦力と荷重を同時測定 → 摩擦係数を自動算出
  • b)多様な材料に対応:金属、樹脂、ゴム、コーティング膜など
  • c)安定した試験条件:荷重・速度・環境を制御し、再現性の高いデータを取得
  • d)シンプルな操作性:教育用から研究・品質管理まで幅広く活用可能
新東科学 TYPE:14FWで測定を行っている様子

2)接触角の測定

➀接触角とは

接触角は、固体表面に液滴を置いたとき、液滴と表面が接する境界で形成される角度のことを指します。この角度は、液体が表面に「どれだけ濡れるか(濡れやすさ/撥水性)」を示す指標になります。

➁接触角でわかること

表面処理(コーティング、洗浄、プラズマ処理など)の効果や、材料の表面特性を「接触角」で定量的に評価できます。

  • a)接触角が小さい(例:10°〜30°程度) → 液体が広がりやすい → 表面は親水性
  • b)接触角が大きい(例:90°以上) → 液体が丸くとどまる → 表面は撥水性
接触角の大小による「ぬれやすさ」と「撥水性」の違いを表した比較図。【出典】協和科学ホームページ

➂接触角測定装置

当社では、下記のような特長のある協和界面科学製ドロップマスターDM500で接触角を測定しています。

a)高精度な画像解析
液滴形状を高解像度カメラで撮影し、接触角を正確に算出します。
b)簡便な操作性
液滴を落として画面上で解析するだけで、誰でも短時間で測定が可能です。
c)研究から量産現場まで対応
材料開発の初期評価から、製造工程の品質チェックまで一貫して利用可能です。
協和界面科学製 接触角計 ドロップマスターDM500の外観写真

06 摩擦耐久テストデータ

1)摩擦耐久テスト条件

テスト方法、往復摩擦条件は、下記のように設定しています。

項目 内容
試験機 新東科学(株) TYPE:14FW
塗布基材 SUS304 2B材
摩擦条件 荷重:1500g
往復ストローク:20mm
摩擦速度:6000mm/min
摩擦押しつけ圧子試料 ミノグループ社製剣型スキージブレード
先端角度:80°
硬度:JIS K6253
デュロメータ タイプA(シェアA) 62~68°
(硬さは、車のタイヤ程度)

2)非粘着コーティング テープ粘着テスト動画

非粘着コーティング:あり

非粘着コーティングされたステンレス板から、粘着テープを剥がしている様子
  • ・非粘着コーティングしたステンレス板では、粘着テープが接着せず、容易に剥がれます。
    (粘着テープ:ニチバン セロテープNo.430)

非粘着コーティング:なし

非粘着コーティングされていないステンレス板が、粘着テープの接着力によって持ち上がっている様子
  • ・非粘着コーティングなしの場合、ステンレス板には粘着テープが接着するため、ステンレス板が持ち上がります。

3)動摩擦係数測定データ

SUS板上コート膜の動摩擦係数測定グラフ。往復回数に対し、当社非粘着コーティングは係数0.05付近で低く安定している一方、フッ素樹脂コーティングはより高い値で推移し、6,000回付近からさらに上昇する傾向を示している。
  • ・フッ素樹脂コーティングは、約6千回で動摩擦係数が上昇します。
  • ・当社非粘着コーティングでは、動摩擦係数は低いままで変化しません。
  • ・20万回でも低いままです。

4)接触角測定データ

SUS板上コート膜の接触角測定グラフ。往復回数に対し、当社非粘着コーティングは105°以上を維持して安定している一方、フッ素樹脂コーティングは急激に数値が低下し、未コート品(約85°)と同等のレベルまで落ちる推移を示している。
  • ・フッ素樹脂コーティングは、約1.3万回で接触角が未コートレベルに低下します。
  • ・当社非粘着コーティングは、20万回でも低下しません。

07 フォトレジストに対する非粘着コーティング

1)フォトレジスト滴下動画

非粘着コーティング 左側:なし 右側:あり

フォトレジスト滴下実験の比較。左側の非粘着コーティングされていないステンレス板は液体が太く広がって付着し、右側の非粘着コーティングされたステンレス板は細い筋状に流れ落ちている。

鏡面仕上げされたステンレス板にフォトレジストを滴下する実験です。

左側のステンレス板は、非粘着コーティングされていないため、フォトレジストが広い幅で付着します。

右側のステンレス板は、非粘着コーティングされているため、フォトレジストがほとんど付着しません。

フォトレジスト滴下動画のサムネイル画像。クリックで動画を表示する。

2)フォトレジスト滴下後の拭き取り動画

非粘着コーティング:なし

非粘着コーティングされていないステンレス板でのフォトレジスト拭き取りテスト。クリーンワイプで拭っても汚れが伸びて付着し続け、完全には除去できずに赤い跡が残っている様子。

非粘着コーティングされていないステンレス板に付着したフォトレジストは、クリーンワイプで拭き取ってもきれいに拭き取れません。

非粘着コーティング:あり

非粘着コーティングしたステンレス板では、フォトレジストがほとんど付着していないため、」クリーンワイプで軽く拭き取ることができます。

08 測定評価装置

クリーンルーム内にて下記のような各種測定評価装置を保有しています。

レーザー顕微鏡

コーティング表面のレーザースキャンによる表面プロファイル測定、光学画像を測定します

レーザー顕微鏡の外観写真

デジタルマイクロスコープ

コーティング表面の光学画像を深い焦点深度で測定します

デジタルマイクロスコープの外観写真

接触角測定装置

撥水性(非粘着性)を測定します

接触角測定装置の外観写真

動摩擦係数測定装置

摩擦耐久テストに用いる装置です

動摩擦係数測定装置の外観写真

09 バリエーション・特徴

1)一覧表

タイプ 用途 非粘着性 接触角 滑り性 耐久性 耐薬品性
Sタイプ
優れた非粘着性を幅広い基材で実現
◎
〇
◎
◎
△
Tタイプ
離型性に優れ、主に金型向け
◎
〇
△
〇
△
Fタイプ
半導体業界向け粘着物クリーニング・メンテナンス低減
△
◎
◎
◎
◎

2)用途別実績

[工業用刃物]平刃の外観写真

[工業用刃物]平刃

[工業用刃物]丸刃(スリッター)の外観写真

[工業用刃物]丸刃(スリッター)

[工業用刃物]その他刃物の外観写真

[工業用刃物]その他刃物

[金型]抜き金型の外観写真

[金型]抜き金型

[金型]成型金型の外観写真

[金型]成型金型

[半導体製造装置部材]スピンコーターガイドの外観写真

[半導体製造装置部材]スピンコーターガイド

[半導体製造装置部材]装置ステージの外観写真

[半導体製造装置部材]装置ステージ

[半導体製造装置部材]ウェハ吸着プレートの外観写真

[半導体製造装置部材]ウェハ吸着プレート

[半導体製造装置部材]ウェハ吸着ステージの外観写真

[半導体製造装置部材]ウェハ吸着ステージ

[搬送部材]ロールラベルの搬送ローラーの外観写真

[搬送部材]ロールラベルの搬送ローラー

[搬送部材]ホッパー・シュートの外観写真

[搬送部材]ホッパー・シュート

10 吸着プレート

プリント基板用露光装置で使われる吸着プレートを半導体装置で使われる各種ステージへの非粘着コーティングの事例として紹介します。

露光テーブル部品「吸着プレート」の外観写真と、寸法・材質などの仕様
露光テーブルへの吸着プレート設置イメージと、レジストの転写/剥がれ防止に「非粘着」が必須であることを示した図解