MEMS事業
実績

国内大手医療機器メーカー 人工視覚用部材供給、一部加工支援

実績一覧戻る

2008年~2019年

 2008年に国内大手医療機器メーカーの開発部門から人工視覚開発でMEMS技術が応用できないか検討したいとのご連絡をいただきました。それまでのMEMS技術は、半導体・電子部品関連メーカーのお客様がほとんどであったため、異業種からの問い合わせに驚きました。
 人工視覚は、人工網膜とも言われています。失明した人の体内に埋め込んで視覚を再建する人工感覚器です。日本では、再生医学とMEMS技術を融合した独自の取り組みが行われてきました。
 網膜は多層の構造をしており、最下部に光を神経への電気信号へ変換する視細胞があります。失明に至る病気では、この視細胞が機能不全になります。ただ、失明に至っても視細胞以外の網膜細胞がかなりの割合で残っており、視細胞の代わりに人工視覚デバイスで電気刺激を行えば、視覚の一部を再建することができます。
 人工視覚は、(1)カメラ(CCD)が付いたメガネ(2)カメラの画像を送信する電子回路(3)画像を電気信号に変換する電極チップで構成されています。手術により側頭部に電子回路、眼球後部に電極チップを埋め込みます。電子回路と電極チップをケーブルで接続します。また、側頭部の外側に出た電子回路と眼鏡フレームをケーブルで接続します。
 カメラの電源を入れると画像が眼鏡フレームから電子回路を介して電極チップに届きます。電極チップは視細胞のように機能して視神経を通して脳に画像情報を伝えて脳内で映像が再現されます。


 現時点では、画像は黒い背景に白い点の集合体として認識されるそうです。 2014年~2015年に実施された臨床研究では、白線に沿って真っすぐ歩いたり、テーブルにある箸と茶わんを見分けたりする能力が向上したとのことです。
 当社への検討依頼は、微細加工によってデバイス形成したセラミックス基板と、特殊ガラス板との異種素材の接合でした。当初は当社で開発した樹脂接合による低温接合で試作を行いました。


 その後、樹脂から金属配線を用いた接合(共晶接合)へと数年間にわたって試作開発を手伝わせていただきました。体内に埋め込まれるデバイスのため、材料選定から慎重に検討する必要があり大いに勉強させていただきました。
MEMS受託加工のことなら、まずはお気軽にお問合せください。